まぁゆっくりしていけ(^し^)

適当に書き連ねさせて頂きたく早漏

「華竜の宮」を読んだ感想

上田早夕里さんの「華竜の宮」を読みました。


買ったのは今年の初めとかだったんですが、その前に積んでる本を消化してたらいつの間にか生活も変わってしまいました。


以下ネタバレあり総評


2010年に出版された本作は、あの東日本大震災の前年に生まれました。
あの災害とどう関係があるかというと、やれ地殻がどうのマントルがどうのと作中で描かれるからなのですが……
ある意味、想像上のパンデミックが実際に起きてしまったという最早そのままでもSF小説に出来そうな事が起きてしまったんですよね。
いやぁ面白いですね。

本作品は、リ・クリテイシャスという大規模な海の温度上昇によって南極の氷が溶かされ、海面が260メートル上昇した大災害によって、人類は海で暮らす海上民と僅かに残った陸地で暮らす陸上民とで別れた世界です。


独特な設定です。この「海上民」というのも遺伝子操作された人間であり、海で暮らすために様々な機能を備えていたりと、SFって感じがハンパないです。

海の中には独特の生態系が新たに築かれ、陸上では陸地の奪い合いや新たに出来上がった政府や連合が日々他の勢力を出し抜く為に画策している世界。

主人公は青澄。
「外洋公館」という、海と陸との交渉が専門の場所で働くお役人です。

そしてそのサポーターとして、これまた近未来的な「アシスタント知性体」のマキ。
マキには身体が無く、「ボディ」という体を用意されなければ行動はできません。
しかし、アシスタントというだけあって、パートナーとのリンクをすることで、脳内物質の調整からクリアランスレベルによる深い部分の情報操作まで可能なのです。
面白い。

マキに人格はありませんが、パートナーとの生活の中で各々それらしきものが育まれていく様子が下巻にて読み取れました。


少し感情的に書かせてもらうと、非常に感銘を受けました。こういったら上から目線な感じですが、本当に凄かったです。素晴らしい。ここまで練られた作品があるのか、といった感じ。

海と陸、朋と知性体。対比何でしょうかね。

どちらかと言えば、海で暮らすのと陸とでのヒューマンドラマ的な内容よりは政治寄りで、それに世界観が加わって広がりを見せていく雰囲気。面白い。


いやぁ面白い。マジで面白い。


最初買う前にどっかのレビューで翠星のガルガンティアとか見たような気がしたけど、あれはあれで海上世界だけど、これもマジで面白い。なによりリアリティって感じ。
海上面の上昇と共に発生する難民の受け入れを拒む各先進国。そのためになりふり構わず人体実験を認可し、殺戮兵器を生み出した人間。負の歴史。


そして物語の終盤で明らかになる「華竜」。


そうまでして人間は生きる価値があるのか。
生きること自体が罪なんだ。産まれてしまったがために必死に生きようともがく獣舟。袋人。

生物の生への執着や、地球から人間へ当てた終焉の感覚が大変そそらせてくれました。
大変満足です。感謝。この小説と巡り会ったことに感謝。マジで買って損は無い。面白かった。